「もう一度、薬剤師として働きたい」
そう思っていても、10年という長いブランクを前に、なかなか最初の一歩が踏み出せないでいるママ薬剤師さんへ。
「近所の薬局で働きたいけど、眼科の処方をうけてるみたい…」
「経験ないし眼科の処方箋って難しそう…」
「昔勤めてたけど最新の薬は全然知らない…」
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この「子育て中でもスキマ時間に! ブランク10年のための薬局復帰おさらい帳」シリーズでは、その不安を一つずつ一緒に乗り越えていきます。
忙しい子育ての合間を縫って、最短で現場復帰を目指すママ薬剤師のための復習講座です。
【眼科編】では、現場でよく出る薬と服薬指導のコツに絞って解説します。
ドライアイについて病態や処方薬、服薬指導のコツ
今すべてを網羅する必要はありません。
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復習を始める前に!最短で復帰するための行動プラン
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これで完璧!ドライアイの知識と服薬指導のポイント
コンタクトレンズやデジタル機器の普及により、ドライアイは常に処方箋を見かけます。
まずは病態と治療の流れを掴みましょう。
ドライアイの基本:病態をサクッと理解
涙の量が減ったり、涙の質(油・水・ムチンのバランス)が崩れたりすることで、目の表面が乾燥し傷つきやすくなる状態です。
症状は、目の乾き、異物感、目の疲れ、充血、目がかすむ、など。
エアコンやPC・スマホの長時間使用など、現代の生活環境が原因となることも多いです。
治療指針の基本:3つのステップ
治療の基本は、「涙の補充」と「涙の質の改善」、そして「角膜の保護」です。
診療ガイドラインでは、まず人工涙液などで不足を補うことから始めます。
効果が不十分な場合に、涙の成分を増やす薬や抗炎症薬などを段階的に使用していくことが推奨されています。
生活環境の改善や意識的なまばたき指導も、薬物療法と並行して非常に大切になります。
現場でよく見るドライアイ治療薬3つの系統
涙液補充・保護薬
代表的薬剤:ヒアレイン、アイケア、ティアバランス、ヒアロン酸(ヒアルロン酸Na)など
作用:涙の不足分を補い、目の表面に留まり、角膜を保護する。
用法用量:1日5~6回1滴点眼。
ポイント:
防腐剤フリーの製剤(ミニ点眼容器)が多い。
ミニは開封したら1回で捨てる使い切り。
使い切りタイプは最初の1,2滴は捨てる(容器の破片を避けるため)
粘性が高く、点眼後に目の中で広がるのに時間がかかる。
ムチン・水分分泌促進薬
代表的薬剤:ジクアス(ジクアホソルNa)など
作用:涙の成分の「ムチン」や「水分」の分泌を促進し、涙の質を改善する。
用法用量:1日6回1滴点眼。
ポイント:
比較的新しい薬。
ヒアルロン酸Na製剤で効果が不十分な場合によくステップアップとして使われる。
点眼回数が多いため、患者さんのコンプライアンスの確認が必要。
ムチン産生促進薬
代表的薬剤:ムコスタ(レバミピド)など
作用:涙の層の最も内側にあるムチンの量を増やし、目の表面のバリア機能を高める。
用法用量:1日4回1滴点眼。
ポイント:
点眼後に白い塊が出たり、苦みを感じたりする副作用が特徴的。
患者さんが不安になるため、事前に服薬指導で必ずフォロー。
懸濁性のため、使用の際に容器の下部を持ち、丸く膨らんだ部分をしっかりはじく。
点眼後、目を閉じて目頭を1分以上押さえる。
アルミピロー開封後は遮光保存(点眼口を上向きにして)
人口涙液
人口涙液マイティア
1日5~6回点眼
ソフトコンタクトには使用禁止(レンズに徐々に吸収される)
患者さんに「ありがとう」と言われる服薬指導のコツ
防腐剤フリーの薬は「使い切り」を徹底指導!
ヒアルロン酸Na製剤など、ミニ点眼容器(一回使い切りタイプ)は、防腐剤が入っていません。
「開封したら1回で捨てる」という指導を、理由(雑菌が繁殖しやすい)とセットで丁寧に伝えましょう。
ムコスタ点眼薬の苦味・白い塊への対処法
ムコスタは、点眼液が口に入ると苦みを感じることがあります。
苦味の軽減には、「ティッシュなどで溢れた液を拭き取り、目を閉じたまま目頭を軽く押さえる」と伝えます。
白い塊は成分の結晶であり、問題ありません。
コンタクト使用患者へのアドバイス
「コンタクトレンズを装着したまま点眼できるか」は、主に薬に含まれる防腐剤と有効成分がレンズに吸着・変質しないかが基準となります。
コンタクトレンズ(CL)を装用しているか・それについての医師の指示を確認しましょう。
また、カラーコンタクトの場合は、必ず外してもらうようお願いします。
ドクターから指示がない場合→
- 点眼薬をさす際は、基本的にはCLを外す(ハードやソフトに関わらず)
そもそも目に負担がかかるので。 - 点眼時に外したら、5~10分空けて再装着
- ヒアレインミニ→医師の指示があれば装着したままOK。要確認。
- ヒアレイン0.1%(ボトルタイプ)→ソフトCLは外す必要あり(防腐剤が吸着)
- ムコスタ(レバミピド)→基本的に外す(有効成分が吸着)
- ジクアス(ジクアホソルNa)→ソフトCLは外す。
医療用とどう違う?市販のドライアイ点眼薬を成分別に解説
ドライアイについては市販薬で対応したい患者さんが多く、よく問い合わせを受ける印象です。
調剤併設のドラッグストア勤務の場合などは、処方薬と比べてどうなのかと頻繁に聞かれますね(笑
これらの市販薬の特徴と、現場に活かせるポイントを抑えておきましょう。
いずれも、2週間くらい使用しても症状がよくならない場合は受診を勧めます。
人工涙液タイプ(防腐剤フリーの基本薬)

- 塩化カリウム、塩化ナトリウムなど(涙液成分)
- 防腐剤フリーのミニボトル。開栓後10日を過ぎたら廃棄
- 1回2~3滴、1日5~6回
- すべてのタイプのコンタクトレンズ(ソフト・O2・ハード・使い捨て)を装着したまま点眼できる。※カラーコンタクトは除く
- ビタミンB12など配合の「ひとみストレッチ」は開封後1か月目安で使用。

- 涙液成分の他、代謝促進にタウリンやL-アスパラギン酸カリウム 、角膜保護成分など
- 防腐剤フリーの1回使い切りタイプ。
- 1日3~6回、1回2~3滴
- すべてのタイプのコンタクトレンズ(ソフト・O2・ハード・使い捨て)を装着したまま点眼できる。
- 「アイリスCL-Iネオ」には角膜保護成分は配合されていない。
角膜保護成分配合タイプ(超・高粘度で潤いを保持)

- ポビドン(角膜ダメージケア成分)など配合
- ソフトコンタクト装着時は使用不可
- 1回1~3滴、1日5~6回点眼
- 痛みを感じるくらいの目の乾燥に

- コンドロイチン硫酸エステルナトリウム(角膜保護成分) 0.5%他、配合
- 1回1~2滴、1日3~4回
- 点眼後、しばらく視野がぼやけるので注意(薬液が高粘度のため)
- 全てのコンタクトレンズ装着時で使用可能(カラーコンタクトも)

- ヒプロメロース、コンドロイチン硫酸エステルNa 配合
- カラーコンタクトを除く、全てのコンタクト装着時に使用可能
- 防腐剤無添加
- 1日3~6回、1回1~3滴
医療用成分配合タイプ

- 医療用点眼薬と同じ有効成分(精製ヒアルロン酸ナトリウム)が配合
- カラーコンタクトレンズをのぞく、すべてのコンタクトレンズ装着中にOK
- 1回1滴、1日5~6回
患者さんにおすすめする際のポイント
ドライアイ用目薬は本当にお値段がピンキリです。
患者さんに「市販薬ならどれがいい?」と聞かれた場合は、症状によって薬を紹介する薬を変えましょう。
- 軽い目の乾きやかすみ→まずは一番安価な人口涙液、効果不十分なら角膜保護成分入りのもの
- 乾きがひどい・痛みあり→角膜保護成分入りのものの中から、患者さんの要望に合わせて効果とコスパで選ぶ
わたくし個人的には、容器の使い勝手と価格を重視します。
症状が軽い順に、
- ソフトサンティア
- スマイルコンタクトEX ドライテクト/なみだロートドライエイドコンタクト
- 他プレミアム系
でおすすめしてます。
眼科での薬局復帰におすすめの本
面接をクリアして、眼科に復職が決まったら、専門書でさらに詳しい知識を付けましょう。
書籍を使ったおすすめの勉強法は、簡単なものから先に読んでいくことです。
読む順番は
- 一般向けの簡単なもの
- 薬剤師向けの本
- 医師向けの専門書
この順で読んでいくことで、次のように効率的に理解が進みます。
- 患者さんの不安や疑問、分かりやすい表現を知る
- 詳しい薬剤知識と服薬指導のポイントを頭に入れる
- 医師の処方意図や病院での処置について知る
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まとめ
- 病態:涙液量の減少や、涙液成分のバランス変化により目の表面が乾燥し傷つきやすくなる病気
- 症状:目の乾き、異物感、目の疲れ、充血、目がかすむ、など
- 治療指針:
- まず人工涙液
- 効果不十分なら、角膜保護や涙の成分を増やす作用薬、抗炎症薬などを段階的に追加
- 人口涙液:
- 人口涙液マイティア
- 1日5~6回点眼
- ソフトコンタクトには使用禁止
- 人口涙液マイティア
- 涙液補充・角膜保護薬
- ヒアレイン、アイケア、ティアバランス、ヒアロン酸(ヒアルロン酸Na)
- 1日5~6回
- 粘性が高く、点眼後に目の中で広がるのに時間がかかる。
- 防腐剤フリーの使い切り製剤もあり
- ヒアレイン、アイケア、ティアバランス、ヒアロン酸(ヒアルロン酸Na)
- ムチン・水分分泌促進薬
- ジクアス(ジクアホソルNa)など
- 作用:涙の成分の「ムチン」や「水分」の分泌を促進し、涙の質を改善する。
- 1日6回1滴点眼。
- 比較的新しい薬。
- ヒアルロン酸Na製剤で効果が不十分な場合に、よくステップアップとして使われる。
- ムチン産生促進薬
- ムコスタ(レバミピド)
- 作用:涙の層の最も内側にあるムチンの量を増やし、目の表面のバリア機能を高める。
- 1日4回
- 点眼後に白い塊が出たり、苦みを感じたりする副作用が特徴的。
- 点眼後、目を閉じて目頭を1分以上押さえるとよい。
- 懸濁性のため、使用の際に容器の下部を持ち、丸く膨らんだ部分をしっかりはじく。
- 点眼薬をさす際は、基本的にはCLを外す(ハードやソフトに関わらず)
そもそも目に負担がかかるので。- 点眼時に外したら、5~10分空けて再装着
- ヒアレインミニ→医師の指示があれば装着したままOK。要確認。
- ヒアレイン0.1%(ボトルタイプ)→ソフトCLは外す必要あり(防腐剤が吸着)
- ムコスタ(レバミピド)→基本的に外す(有効成分が吸着)
- ジクアス(ジクアホソルNa)→ソフトCLは外す。
- 市販薬はコンタクト装着中も使用可能なものが多い
- 人口涙液系:ソフトサンティア、アイリスCL-Iプレミアム うるおいケア
- 角膜保護成分配合:なみだロートドライエイドコンタクト/スマイルコンタクトEX ドライテクト
- 医療用成分配合:ヒアレインS
いかがでしたか?
何度も読んで頭に入れれば、眼科門前の薬局だけでなくドラッグストアでも即効で役立ちます。
次回は「抗菌点眼薬」を復習します。
一緒に現場復帰を目指して頑張りましょう!